交通事故事例 事故は何故起こったか

《検証》

 

経験豊富な運転者による事故

事故の概要
 平日の午前中、60歳代のAさんは、軽自動車を運転して幅員の狭い道路から広い道路に出ようとしていた。交差点には一時停止標識があったが、いつも車両はほとんどないので一時停止せず、進行方向の左側だけを確認して右折を開始した。ちょうどそのとき、右側からBさんの運転する自動二輪車が走行してきた。2人とも交差点の直前で相手を認知したが、ハンドル操作やブレーキが操作が間に合わず2台は衝突した。


事故の原因

 Aさんが、安全確認を省略したことが事故の原因である。Aさんは運転経験が約30年のベテランで事故や違反の経験はなかった。Aさんにとっては思いもよらない事故だったと考えられる。一方、Bさんは、交差点があることを知っていたが、減速等の措置をとらずに交差点を通過しようとした。Bさんの走行速度は制限速度よりやや高かった。Bさんのほうにも油断があったと言える。


この事故から学ぶこと

 運転経験が豊富な運転者に比較的多い事故が出会い頭事故である。出会い頭事故は、安全確認を怠ったり、安全確認を行ったとしても不十分であったりすることが原因で生じるようだ。豊富な運転経験により学ぶべきことは、安全確認を省略して動作を節約することではなく、安全確認を省略せずに丁寧な運転をすることのはずである。

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自己流の安全確認は危険

事故の概要
 夕方遅く、中学生のA君は自転車に乗って家に帰る途中であった。センターラインのない、やや狭い道路を走行中、反対側に渡ろうと進路を右へ変えようとしていた。そのとき、Bさんの乗用車がA君のすぐ後ろに接近していたのだが、A君は乗用車の接近に気づかなかった。A君が自転車のハンドルを右へ切った直後に、自転車と乗用車は衝突した。


事故の原因

 A君が、後方をよく確認しないで道路を横断しようとしたことが事故の原因である。A君は、車のライトで車が接近することがわかるので、日ごろから車のライトを安全確認の手がかりとしていたらしい。当日は雨が降っていて、車のライトが届きにくかったせいか、Bさんの乗用車が近づいたのがわからなかった。 Bさんは、自転車に注意はしていたが、自転車が直進すると思い込み、危険はないと判断し、減速せずに自転車の横を通過しようとした。事故が発生した道路は、やや狭く、自転車と乗用車の間隔はそれほど広くとれないから、減速するなどの措置が必要であったと考えられる。


この事故から学ぶこと

 中学生は、移動の手段として自転車を使うことが多いためか、この年齢層は自転車事故が多い。自転車で道路を横断するとき、A君のように斜めに道路を横断する光景をよく見るが、これは感心しない横断方法である。また、道路を横断するときは、面倒がらずに目視による安全確認を必ずしてほしい。A君のように自己流の安全確認は危険である。

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道路で遊ぶことは大変危険

事故の概要
 小学生のA君は、友達2人と近所の道路で、オモチャを道路上に置き、通過する自動車が、オモチャをはねるのを見る遊びをしていた。 軽自動車を運転してA君たちがいる場所に接近してきたBさんは、道路の植栽付近にいるA君たちが道路に出ようとしているのを認め、クラクションを鳴らし、速度を落とした。A君はBさんの軽自動車が接近してくるのを認めたが、オモチャを道路上に置いて、友達のいる歩道上に戻れると判断して、道路に出た。Bさんは急ブレーキを踏んだが、間に合わず、軽自動車とA君とは衝突した。


事故の原因

 A君たちが道路で危険な遊びをしていたことが事故の原因である。A君たちが遊んでいた道路は片側が3車線以上ある幅員が広い道路であった。交通量も多く、通過する車の走行速度も高かった。 また、Bさんは危険を予測した行動をとっていたが、A君がまさか道路に出てくるとは思わなかったという油断があったのかもしれない。


この事故から学ぶこと

 道路で遊ぶことは大変危険な行為である。道路で遊ぶことだけでも危険であるのに、A君たちのような危険な遊びをすることは、大変問題である。子どもは、さまざまな遊びを考え出すので油断ができない。保護者や教師は、子どもが日ごろ、道路で遊んでいないかを把握しておくとともに、道路で遊ぶことの危険性を子どもによく認識させる必要がある。また、大人が予測しない行動を子どもはするのだということを、運転者は頭に入れておく必要がある。 

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雨天時のスリップ事故

事故の概要
 19歳のAさんは、乗用車を運転して自宅へ帰る途中、片側2車線ある道路の左側車線を走行していた。雨が降っていて、路面が濡れていたが、速度は時速100Km近く出ていた。前方に別な乗用車が走行していたため、この車を追い越そうとして、右側の車線に出た。追い越した後に左の車線に戻ろうとして、ハンドルを左に切ったところ後輪がスリップし、コントロールを失った。Aさんの乗用車は、道路際のポールに衝突した。


事故の原因

 路面が滑りやすかったにもかかわらず、Aさんが、速度を出し過ぎていたことが事故の原因である。Aさんの乗用車は、高性能のスポーツカーであったが、前後のタイヤとも、摩耗して溝が少なかった。事故があった場所は、Aさんが毎日通行している道で、いつも同じくらいの速度で走行していた可能性がある。


この事故から学ぶこと

 Aさんが、路面状況に対して適切な運転行動をとらなかったことが事故の原因である。いかに高性能な車といっても、タイヤの溝が少なく、滑りやすい路面上において、高速で切り替えしをすれば、スピンしてしまう。最近の車は高性能で、スムーズに走るが、速度を出し過ぎたり、また滑りやすい路面では、危険なことに変わりがない。 人間は、危険が小さくなったと感じると、必要以上に危険に対する認識を甘くするという。自分が根拠のない甘い認識に陥り、知らないうちに、事故につながる運転をしていないかを確認する必要がある。

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通り慣れた道路での交通事故

事故の概要
 平日の夕方であった。Aさんは、買い物をした後、家路を急いでいた。夕食を作る時間が近づいていたので、Aさんは早く家に着きたかった。いつものように、信号機のない交差点に差しかかった。左から交差点に近づいてくる乗用車を認めたが、走れば横断できると思って横断を開始した。しかし、この乗用車は時速80Kmで走行していたので、Aさんが判断したより早く交差点に近づいてきた。また、乗用車の運転者は、交差点と横断歩道があることにも、横断を試みようとしている歩行者がいることにも気づいておらず、Aさんを発見したのは横断歩道の直前であった。Aさんは乗用車にはねられてしまった。


事故の原因

 乗用車の運転者が、前方をよく注意しておらず、Aさんに気づくのが遅れたことが事故の最も大きな原因である。また、速度を出しすぎていたことも、事故に至った大きな原因である。


この事故から学ぶこと

 歩行者事故の多くは、自宅近くの道路で発生している。とくに子どもと高齢者は、自宅近くで事故に遭う割合が高く、自宅から2Km以内の事故の割合は、子ども(12歳以下)では90%、高齢者(65歳以上)では82%である。勝手の知った道路だからといって油断は大敵である。 横断できると思っても、この事故のように、接近してくる自動車が自分を認知していない場合は、事故になりやすい。少しでも危ないと感じたら、横断を思いとどまることが大切である。少し待ったとしても、ほとんどの場合、目的地に着く時間はほとんど変わらないはずである。

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