交通事故事例 事故は何故起こったか

《検証》

 

秋の薄暮時に発生した歩行者事故

事故の概要
 秋の夕方、Aさんは、片側2車線道路を横断しようとしていた。Aさんが横断しようとしていた場所には横断歩道があり、押しボタン式の信号機が設置されていた。信号は赤だったが、左右から車が接近してくる様子がなかったため、Aさんは横断をはじめた。しかし、そのとき、Bさんの二輪車が時速約80qで横断歩道に接近しつつあった。Bさんは、横断中のAさんを認めて急ブレーキをかけたが間に合わず、二輪車とAさんは衝突した。二輪車はAさんと衝突した後、対向車線にはみ出し、対向車と衝突した。


事故の原因

 赤信号であったにもかかわらず、Aさんが、道路を横断しようとしたことが事故の原因である。また、Bさんが制限速度の約2倍にあたる速度で走っていたことも、事故が発生した原因と言える。 事故が発生したのは、日没前後の時間帯であった。2人とも死亡しているので、事故直前の様子は不明であるが、お互いに相手のことが見にくかったのかもしれない。


この事故から学ぶこと

 夕方に発生する事故は、1年を通じて多いのだが、秋から冬にかけての夕方は、とりわけ多くの事故が発生している。中でも、歩行者事故と自転車事故の発生が多い。秋の夕方に事故が多い理由は、はっきりしないが、帰宅や買い物などの通行が多くなる時間帯と、日没前後の視認性の悪い時間帯とがちょうど重なることが、事故の発生に関係している可能性が大きい。この季節は、危険を見落とすことがないよう、いつもより注意して通行する必要がある。

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チャイルドシートと後席乗員のシートベルト

事故の概要
 休日の午後7時ごろ、Aさんは乗用車を運転して片側2車線の道路を通行していた。Aさんは、交差点を右折するために、交差点の中央付近で停車した。対向の直進車を何台かやりすごした後、対向車は右折待ちの車だけとなった。Aさんは、直進車は来ないと判断し、右折を開始した。しかし、そのとき、Bさんの乗用車が、交差点を直進しようと交差点に進入してきた。Bさんは、Aさんが右折しようとしているのを見て、急ブレーキをかけたが間に合わず、2台は衝突した。AさんとBさんはシートベルトをしていて無傷であったが、Aさんの乗用車の後席に乗っていた、男の子と、その母親はチャイルドシートやシートベルトをしておらず、2人とも頭と顔を窓ガラスにぶつけて大ケガをした。


事故の原因

 Aさんが、対向車の有無をよく確認しないで、右折を開始したことが事故の原因である。Aさんは、右折した先の横断歩道上に歩行者がいないかを気にしていたという。また、後席の乗員がチャイルドシートやシートベルトをしていなかったことが、事故の被害を大きくさせた。チャイルドシートやシートベルトをしていれば、後席の2人はケガをせずに済んだ可能性も高い。


この事故から学ぶこと

 運転者は、交通事故を避ける努力をするとともに、万一の場合に被害を軽減する努力をする必要がある。この事例で言えば、交差点を安全に右折することも重要だが、すべての乗員にシートベルトやチャイルドシートを着用させることも重要である。衝突の衝撃から乗員の安全を守るためには、シートベルトやチャイルドシートにより、身体をシートに拘束することが最も確実な方法である。

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一時不停止による高齢者の自転車事故

事故の概要
 平日の午後、Aさんは仕事で会社の車を運転し、市街地の細い道路を通行していた。Aさんが通行していた道路は、幅員が4.5mの裏通りで、幅員の狭い道路と交差する十字路が連続していた。Aさんが、交差点のひとつを通過しようとしたとき、左側から、自転車に乗ったBさんが飛び出してきた。Aさんはブレーキを踏んだが間に合わず、Aさんの車と自転車は衝突した。


事故の原因

 Bさんが通行してきた道路には一時停止の標識があった。自転車に乗っていたBさんが一時停止をしなかったことが、事故の原因である。一方、Aさんが、進行してきた道路も道幅が狭く、事故が発生した場所のような小さな交差点が連続していた。歩行者や自転車の通行も多かった。Aさんは、自転車や歩行者の飛び出しにもっと注意して走行すべきであったと言える。


この事故から学ぶこと

 自転車乗用中に事故に遭う高齢者は非常に多い。とくに、この事例で紹介したように、細い道路が網の目のように交差している市街地では、一時不停止による自転車事故が多発している。このような場所では、自分が通行している道路に、一時停止の標識や標示があるかどうかを、常に注意しながら通行する必要がある。また、一時停止がない側の道路を通行するときも、一時停止をしない自転車や車が不意に現れることを警戒しながら、交差点を通過すべきである。

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原付と左折巻き込み事故

事故の概要
 平日の夕方、Aさんは、会社から帰宅途中であった。Aさんは、普通乗用車を運転し、片側1車線道路を走行していた。Aさんの後方には、B君の原付が走っていた。B君は、Aさんの乗用車が減速したのを見て、Aさんの乗用車を左側から追い越そうとした。B君が乗用車の左側に並んだとき、Aさんの乗用車は左折しようとして、左に向きを変えた。B君の原付は、乗用車の側面に衝突した。


事故の原因

 Aさんが、左後方を確認せずに左折したのが事故の原因である。一方、B君が、Aさんの乗用車を左側から追い越そうとしたことも事故の原因である。左折しようとしていた先の道路が、狭かったためか、Aさんは、道路の左端から離れた場所から左折した。道路端と乗用車との間隔があいていたため、B君は、Aさんの乗用車の側面に、入り込みやすかった。


この事故から学ぶこと

 四輪車が左折するときに、原付や二輪車を巻き込む事故は多い。四輪車の運転者は、左折する場合、左後方に原付や二輪車がいないかを必ず確認する必要がある。原付や二輪車の運転者は、前を走る四輪車が減速するのを見た場合、前車が左折する可能性を、最初に考えるべきである。 原付は、手軽な乗り物として人気があるが、四輪車と衝突したときの被害が大きくなりやすいことが弱点である。この事例で紹介した事故で、B君は頭部に大怪我を負っている。原付を運転するときは、四輪車の動きに十分に注意をして運転する必要がある。

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道路工事場所付近の横断は危険

事故の概要
 晴天の昼ごろ、Bさんは子どもを病院に連れて行くために4WDのワゴン車を運転していた。片側1車線の道路を通行していたところ、道路工事のために片側交互通行になっている箇所にさしかかった。自車線側が通行する順番であったため、Bさんはそのまま自分の車線を走行し、もう少しで工事区間が終わるところまで進行した。ちょうどそのとき、反対車線に停止していた工事車両の後方から、道路を横断しようとしていたA君がBさんの車の前に現れた。Bさんは急ブレーキをかけたが間に合わず、ワゴン車とA君は衝突した。


事故の原因

 Bさんが横断歩行者の存在を十分に予測していなかったことが事故の原因である。工事車両の横を通過するときに、Bさんは速度を十分に落としていなかった。A君が車から視認されにくい場所から横断を試み、接近する車の確認を十分にしていなかったことも事故の原因である。


この事故から学ぶこと

 道路工事のため、車線が規制されている場所ではさまざまな危険が存在する。路面が荒れていたり、工事用車両や作業している人が道路上に急に出てきたり、思いがけない横断歩行者があったりする。危険を感じた前車が急停止することもある。このような場所を通行するときには、危険を予測しながら、注意を払って通行する必要がある。自車が通過する順番になったからといって、急いで通過しようとするのは危険である。 また、このような場所は片側車線だけ車が通行していて、時々、交互通行のために車の通行が途切れる場所であるため、子どもの目から見ると横断しやすい場所と見えるのかもしれない。子どもの誤った認識を修正し、安全な通行ができるように子どもを教育することは、大人の責任である。

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