交通事故事例 事故は何故起こったか

《検証》

 

不完全な一時停止による事故

事故の概要
 平日の夕方、短大生のAさんは原付に乗って下校していた。片側1車線である下り坂の道路を直進していたところ、左側の道路から走ってきた乗用車が、交差点の手前で一時停止するのが見えた。乗用車のほうに一時停止の標識があったため、Aさんは、この乗用車は交差点に進入しないと判断し、Aさんはそのままの速度で進行した。ところが、Aさんが交差点に接近したところ、この乗用車は発進し、交差点に進入してきた。Aさんは急ブレーキをかけたが間に合わず、乗用車と衝突した。


事故の原因

 乗用車を運転していたBさんが、左右の安全確認をしないで交差点に進入したことが事故の原因である。Bさんは、横断歩道付近で停止したが、左右の安全を十分確認せずに発進し、Aさんの原付が接近していることに全く気づいていなかったという。 一方、乗用車を発見しながら、速度を落とすなどの措置をとらなかったAさんにも、油断があったと言える。


この事故から学ぶこと

 一時停止の標識がある交差点で発生した事故の中には、一時停止はしたのだが、安全確認が不十分なままに発進し、事故になったという事例も多い。一時停止をするのは、交差する道路の人や車両に道を譲ると同時に、交差点の状況の把握と、適切な行動の選択を行うためである。これらを確実に行うには、しかるべき場所で、速度0q/hで停車し、必要な行動をしっかり行う必要がある。何のための一時停止かについての認識がないと、形式だけの一時停止や、不完全な一時停止となってしまい、知らず知らずのうちに事故に近づくことになる。

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若者による「遊び型」の事故

事故の概要
 平日の深夜、A君は友人のB君を隣に乗せて、片側2車線の道路を走っていた。A君はB君と飲食店に行った帰りで、酒を飲んでいた。規制速度は時速50qの道路であったがA君は時速100qで走行していた。A君の乗用車は交差点に差しかかった。この交差点は右折レーンが設置されていたため、交差点の入り口と出口では中央分離帯の位置が異なっていた。A君はB君との話で盛り上がり、注意が散漫になっていた。A君の乗用車は、中央分離帯に車体の右前を引っかけた。速度が出ていたため、乗用車は横転し大破した。


事故の原因

 A君が同乗者との話に夢中になり、運転操作を誤ったことで発生した事故であるが、A君が飲酒をし、規制速度を大幅に上回る速度で走行していたことが、事故の原因である。なお、A君は運転免許を取得して約4か月であった。


この事故から学ぶこと

 若年人口の減少により、若者の事故は減少している。しかし、これは若者の事故が以前よりは目立たなくなったということであり、毎年多くの若者が、速度超過などの無謀運転が原因とする事故で死亡している。若者には、同年代の友人と夜間外出する傾向が目立ち、事故の多くはこれらの行動の途中に発生する「遊び型」の事故である。このような事故を起こす若者は、速度超過や飲酒運転などの危険性を十分に理解していないし、速度超過や飲酒運転がもたらす結果の重大性についての認識も低いようである。「遊び型」事故の危険性を教えるのは、社会以外にはあり得ない。家庭、学校、職場などが、交通事故の危険性を若者に責任を持って教育する必要がある。

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自転車の一時停止と安全確認

事故の概要
 平日の午後、Aさんは配達のため小型トラックを運転して裏通りを走っていた。配達時間に遅れそうだったので、制限速度を超える速度で走行していた。Aさんは、前方に信号機のない交差点を認めたが、交差する道路は狭い道路であり、Aさんが進行している道路のほうには一時停止の規制はなかったので、Aさんは速度を落とさず交差点を通過しようとした。Aさんが交差点に進入したとき、左側からBさんの乗った自転車が交差点に進入してきた。Aさんは急ブレーキを踏んだが間に合わず、2台は衝突した。この事故によりBさんは頭を強く打って死亡した。


事故の原因

 交差点には横断歩道があり、横断歩道が近いことを知らせる路面標示もあった。また、交差点手前には駐車車両があって、Aさんからは交差点左側がよく見えなかったと考えられる。歩行者や自転車に対処できるように、いつでも停止できる速度で交差点に接近するべきであったにもかかわらず、速度を出したまま交差点を通過しようとしたAさんの判断が、事故の原因になったと言える。 一方、一時停止の標識と標示があったにもかかわらず、一時停止をせずに交差点に進入したBさんの行動も事故の原因であると言える。


この事故から学ぶこと

 自転車は、自動車と衝突したときの被害が大きくなりやすく、低い速度の事故でも死亡事故になることがある。自転車事故の事例を見ていると、自転車の信号無視や一時不停止、後方の安全確認をしないままの斜め横断により発生した事故が多い。道路を横断するときの一時停止と安全確認は、自転車に乗る人が常に守るべき最低限のルールである。

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大型車の幅寄せにより発生した高速道路上の事故

事故の概要
 日曜日の朝、Aさんは友人3人を自分の車に乗せて、小雨の中、高速道路を走行していた。Aさんが走行車線を走行していると、追い越し車線を走ってきた大型トラックが、Aさんの乗用車を追い越し、Aさんの前で走行車線に戻ろうとした。Aさんは抜かれたくないと一瞬思って、速度を上げ、大型トラックに並んだ。これに対して大型車トラックの運転者は、警告のつもりでハンドルをわずかに左に切った。慌てたAさんがハンドルを左に回したところ、乗用車はスリップし、道路左側のガードパイプに衝突した後、道路を斜行して中央分離帯に衝突した。乗用車は大破し、Aさんは軽傷であったが、後席に乗っていた友人が車外に放出されて死亡した。


事故の原因

 大型トラックの運転者が、幅寄せをしたことが事故の原因である。また、Aさんがトラックの進路を妨害したこと、慌てて不必要に多くの操舵を行ったことも事故の原因になったと言える。また、車外に放出された乗員はシートベルトをしていなかった。シートベルト非着用であったことが、事故の被害を大きくさせたと言える。


この事故から学ぶこと

 高速道路では快適な走行が可能であるが、高速道路の走行は重大事故の危険と隣り合わせであることを忘れてはならない。ちょっとした不安全な行為が、思わぬ重大事故につながることがある。高速道路を走行するときは、不安全な行為をしないようにとくに注意したい。また、すべての乗員がシートベルトを着用しているかどうかを、運転者は常に確認すべきである。

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近所の人同士の交通事故

事故の概要
 平日の夕方、大学生のAさんは、アルバイトに行くために乗用車で自宅を出発した。出発してすぐに、信号機のない交差点に差し掛かった。その交差点はAさんのほうに一時停止の標識があったが、交差しているもう一方の道路の幅員は狭く、車の通行が少ない交差点だったので、Aさんは減速しただけで一時停止せずに通過しようとした。ちょうどそのとき、Aさんの右側から、Bさんの自動二輪車が交差点に進入してきた。BさんはAさんの乗用車に気づき、急ブレーキをかけたが間に合わず、自動二輪車は乗用車の右側面に衝突した。


事故の原因

 Aさんの進行方向に向かって右側には樹木が茂っており、見通しが悪かった。注意して通行すべき交差点であったにもかかわらず、Aさんが、十分な安全確認を怠り、一時停止をしなかったことが事故の原因である。


この事故から学ぶこと

 事故の起こった交差点から、Aさんの自宅までは約50m、交差点からBさんの自宅までは約20mであった。2人ともこの交差点を毎日通行していたとのことである。 自宅に近い場所では、緊張感や危機感が薄れがちであると考えられるが、自宅近くで発生する事故も多い。通り慣れた道でも油断せずに通行することが大事である。家族や近所の人と、近くの道路の通行方法を話し合うのもよいだろう。自分や家族が知らず知らずのうちに危険な行動をしていないかを、時々チェックするとよい。

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