交通事故事例 事故は何故起こったか

《検証》

 

見通しのよいY字交差点で薄暮時に発生した事故

事故の概要
 平日の夕方、Aさんは乗用車を運転し、大きな河川の堤防沿いの道路を通行していた。時間は日没の直後であり、周囲の様子が次第に確認しにくくなっていた。Aさんが進行していた道路は、河川の向こう岸に渡る橋に通じる道路と市街地に向かう道路の二またに分岐しており、Aさんは市街地の方向に進もうとしていた。Aさんが道路の分岐に近づいたとき、橋に向かう道路から原付が接近してくるのを認めた。橋に向かう道路のほうに一時停止の規制があるのを知っていたので、原付は停止するものと考え、Aさんはそのまま進行した。しかし、この原付は一時停止せずに交差点に進入してきた。2台は交差点の中央付近で衝突し、原付を運転していたBさんが重傷を負った。


事故の原因

 原付を運転していたBさんが、一時停止をせずに交差点に進入したのが事故の原因である。この交差点は堤防上にあり、どの方向からも見通しはよかった。衝突の直前、原付を運転していたBさんは、自分の左側の道路から車両の接近がないかを注意していたが、もう一方の道路のほうには十分に注意を払っていなかったと言う。Bさんはこの道路を毎日通行しており、交差点の形状や通行の方法も熟知していた。それにもかかわらず、Bさんが乗用車の接近に気づかなかったのは、薄暮時で周囲の様子が確認しにくかったことが影響している可能性が大きい。


この事故から学ぶこと

 周囲が暗くなると、周囲の様子が確認しにくくなる。このような場合、運転者や歩行者は、自分に都合がよい判断をする傾向があるようだ。たとえば、なにも見えないと、周囲に車や歩行者がなく、安全だと判断する傾向があると考えられる。とくに、疲労や考え事などで、頭の働きが鈍っていると、この傾向が強くなる場合があるので注意すべきである。

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高齢者と若年者の運転スタイル

事故の概要
 平日の昼ごろ、75歳のAさんは神社に参拝に行くために、片側2車線の道路を乗用車で通行していた。交差点を右折しようと、右折レーンに入り、速度を落として交差点に接近した。対向の車両が途切れたので、Aさんは右折を開始した。このとき、前方から二輪車が直進してくるのをAさんは認めていたが、十分に右折可能である、とAさんは思った。ところが、この二輪車はAさんが考えていた以上の速度で、交差点に接近していた。2台は交差点の中央付近で衝突し、二輪車を運転していた大学生のBさんが重傷を負った。


事故の原因

 乗用車を運転していたAさんが、対向車の速度と距離に関する判断を誤ったことが事故の原因である。また、二輪車を運転していたBさんが速度を出し過ぎていたことも、事故の原因であると考えられる。Bさんは、時速約80qで二輪車を運転していた。この道路は時速50qに規制されていたが、この道路の車の流れは時速65q程度であったという。


この事故から学ぶこと

 高齢運転者は、速度を出し過ぎることは少ないが、とっさの判断や行動が苦手な傾向にある。一方、若年運転者の場合、素早く行動することが得意であっても、速度を出し過ぎる傾向があるようだ。このように、高齢者と若年者では運転スタイルが異なるが、運転スタイルの異なる人同士が、同じ道路を走ると事故が発生しやすくなる、との意見もある。大事なことは、道路上にはさまざまな運転スタイルの人がいる、ということを頭に入れておくことである。相手は自分と同じように行動するはずだ、と思い込んでいると、思わぬ事故に遭うことがある。

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チャイルドシート非着用での事故

事故の概要
 日曜日の午後、Aさんは乗用車で家族と一緒に買い物に出かけていた。Aさんが運転する乗用車が、市街地の片側1車線の直線道路を走行し信号機のない交差点に接近したところ、突然、左側の細い道路からBさんの運転する乗用車が現れAさんの前を通り抜けようとした。Aさんは慌ててブレーキを踏んだが、停止できずにこの乗用車と衝突した。Aさんの乗用車の後部座席には2歳の女の子が母親に抱かれて乗車していた。衝突の衝撃で女の子は前方に投げ出され、頭と首を負傷した。


事故の原因

 Bさんが一時停止をせずに、交差点に進入したのが事故の原因である。Aさんは後部座席に乗車していた自分の子どもにはチャイルドシートを着用させていなかったが、もしこの女の子がチャイルドシートを着用していれば、ケガをせずにすんだか、ケガの程度が軽くすんだ可能性が高い。


この事故から学ぶこと

 チャイルドシートの着用が義務化されてから4年が経過するが、チャイルドシートの着用率は50%を切っているという。一般道路を普通の速度で走っていても、思わぬ事故に遭遇したときに、大人の手で幼児を支えることはできない。自分が悪くなくても、いつ、事故に巻き込まれるかは予想できないこともある。安全のためには、すべての乗員がシートベルトやチャイルドシートを着用することが必要である。

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携帯電話の通話中に発生した事故

事故の概要
 平日の午前中、Aさんは普通貨物車を運転し、片側2車線の国道を走行していた。運転中に携帯電話に着信があり、Aさんは通話をしたまま運転を続けた。左折する予定の交差点が近づき、Aさんは通話したまま、左折を開始した。Aさんは、横断歩道と自転車横断帯の前で停止し、左右の安全を確認してから車を発進させた。しかし、このとき、Aさんは、右方向から横断中のBさんの自転車を見落としていた。貨物車が発進した直後に、Bさんの自転車と貨物車は接触したが、このときAさんは、自転車と事故になったことを全く認識していなかった。


事故の原因

 貨物車を運転していたAさんが、横断歩道と自転車横断帯を通過する前に、安全確認を十分に行わなかったことが事故の原因である。安全確認が不十分になった原因は、Aさんが携帯電話での通話に気を取られていたからである。また、Aさんは左手で携帯電話を持って通話していたから、片手運転で左折していたことになる。


この事故から学ぶこと

 運転中に携帯電話を使用すると、運転に対する集中力が低下し、前方不注意や認知の遅れなどの危険な状況に陥りやすい。運転している本人は軽視しがちであるが、運転のパフォーマンスは確実に低下している。運転の前には、携帯電話の電源を切るか、ドライブモードなどにするべきである。
 残念ながら、運転中に携帯電話を使用することの危険性を理解しない運転者も少なくない。自転車や歩行者は、相手の運転者が携帯電話を使用していて自分の方を注視していないことを発見したら、横断を中断するなどの、防衛的な行動を取る必要もある。

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車間距離不保持による追突事故

事故の概要
 平日の朝、Aさんは工業製品を積載した大型貨物車を運転し、片側3車線のバイパス道路を走行していた。Aさんは急いでいたので、第3通行帯を前車との車間距離を詰め時速100qで走行していた。Aさんの前を走行していた乗用車を運転していたBさんは、他の車が落としたらしい落下物を前方の道路上に発見し、減速した。車間距離を詰めて走行していたAさんの貨物車は、減速しきれずBさんの乗用車に追突した。


事故の原因

 Aさんが、速度を出し過ぎていたうえに、車間距離を十分にとらずに走行したことが事故の原因である。この道路の最高速度は、時速70qに規制されていた。


この事故から学ぶこと

 自動車専用道路や高速道路では、車間距離を十分にとらずに走行している車両をよく見かける。中には、意図的に前車をあおるような運転を行っているマナーの悪い運転者もいるようだ。自動車専用道路や高速道路で発生する事故の半数以上は、追突事故である。追突事故を起こさないようにするには、前車が急に減速したり、障害物を急に発見したときでも、安全に減速できる距離を見込んで走行する必要がある。とくに、雨の日や下り勾配では、ブレーキが利きにくく、ハンドルで回避した場合にもスリップしやすいので、車間距離と走行速度には十分注意する必要がある。

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