交通事故事例 事故は何故起こったか

《検証》

 

無免許運転の中学生による二輪車事故

事故の概要
 平日の夜半近く、中学3年生のA君は友人2人と1台の二輪車に乗車してドライブに行くことになった。A君が運転し、残り2人は後部座席に乗り、3人乗りで出発した。出発してから10分ほど走行した後、A君たちの二輪車は右カーブに差しかかった。時速70qくらいの速度が出ていたが、A君はこのままの速度で曲がれると判断し、減速せずにカーブに進入した。A君が思っていた以上にカーブは急であり、A君たちの二輪車は曲がりきれずにガードレールに衝突した。


事故の原因

 A君が速度を出し過ぎてカーブを曲がろうとしたことが事故の直接の原因である。この道路の最高速度は時速40qに規制されていた。そもそもA君は無免許であり、しかも乗車定員が2名の二輪車に3人が乗車するという無謀な運転をしていた。この二輪車は同乗していた少年の家族の名義であり、A君たちは、ときどきこの二輪車に乗っていたらしい。


この事故から学ぶこと

 16歳未満の中学生は無免許であり、その中学生が二輪車に乗るということは、盗んだ二輪車に乗るか、だれかの家族が所有している二輪車に乗ることが多い。後者の場合は、どこかの家庭の大人は、無免許運転を知っていることになる。中学生の無免許運転は、まずは家庭での対処が重要であるが、家庭の手に余る場合は、学校、地域などの関係機関が連携して協力することが必要である。すぐにやめさせることができなくても、情報を家庭間や地域で共有し、無免許運転に気づかなかったり、無免許運転に気づかないふりをしないようにする必要がある。

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自転車の飲酒運転

事故の概要
 平日の夜半過ぎ、Aさんは乗用車を運転し、幅員5.5mの道路を走行していた。緩やかな右カーブを通り過ぎた後、Aさんは、前方から、自転車が対向して走ってくるのを認めた。この自転車は、左右にふらつく様子だったので、Aさんは自転車を避けるために走行位置をやや右寄りに移した。このときAさんは時速約50qで走行していたが、減速はしなかった。その直後、この自転車は、走行位置を道路の中央付近に変えた。Aさんは、急ブレーキをかけたが2台は衝突した。


事故の原因

 Aさんが自転車を発見したときに減速せず、そのままの速度で進行しようとしたことが事故の原因である。この道路は、住宅地を抜ける幅員が狭い道路であり、最高速度が時速30qに規制されていた。一方、自転車に乗っていたBさんは、酒酔いの運転の状態であり、酔いの影響でふらついて道路の中央付近に出てきたものと考えられる。Bさんにも著しい過失があったと言える。


この事故から学ぶこと

 自転車は四輪車や二輪車と違うから法規を守らなくても大丈夫、などと安易に考えてはならない。道路交通法で酒気帯び運転を禁止しているのは車両等であり自転車も含まれ、罰則も課せられる。信号無視や一時停止違反も同様である。法規を守らないことは、自分自身が事故で死傷する危険性を増加させるだけではない。自転車同士の事故や歩行者との事故の場合には、交通事故の被疑者として書類送検される一方で、損害賠償等の責任を問われることにもなる。

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斜め横断の自転車と原付の事故

事故の概要
 平日の午後3時過ぎ、Aさんは原付を運転し、幅員約16mの片側2車線道路を通行していた。Aさんは、1台の自転車が前方右側から道路を斜めに横断しようとしているのに気がついた。しかし、見通しのよい直線道路であり、自転車が危険を冒して自分の前を横断するとは、Aさんは考えず、Aさんはそのままの速度で進行した。ところが、この自転車に乗っていたBさんは、原付の接近に気がついておらず、そのまま道路を横断しようと試みた。2台は衝突し、自転車に乗っていたBさんは重傷を負った。


事故の原因

 Bさんの自転車を認めながらも、Aさんが減速するなどの措置をとらなかったことが事故の原因である。一方、左右を十分確認せずに、道路を横断しようとしたBさんの行動にも問題がある。Bさんによれば、この道路はよく通行するとのことであったが、事故の前は、考え事をしていたため、安全確認を十分せずに道路に出てしまったと言う。


この事故から学ぶこと

 出会い頭の事故の中には、比較的見通しのよい場所で発生する場合が少なくない。このような場所では、直前の努力により事故を回避できる余地が大きいと考えられるが、双方の油断が重なると事故が発生する。この事例の場合、原付を運転していたAさんは、Bさんの自転車に気づきながらも回避措置をとらなかった。一方、自転車に乗っていたBさんは、安全確認の不十分と斜め横断という2つの不適切な行動をしていた。3つの油断が重なれば、回避可能な事故も、回避できずに事故になってしまう。

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自分と同じ方向の青信号に従い右左折する車に注意

事故の概要
 正午過ぎごろ、Aさんは乗用車を運転し片側1車線の道路を通行していた。信号機のある交差点を右折しようと交差点に接近したところ、青信号であったため、対向車に注意しながら右折を開始した。このとき、Aさんは見落としていたが、B君が、Aさんと同じ方向の青信号に従い、横断歩道上を横断しようとしていた。Aさんは横断歩道の直前でB君に気づき、ブレーキとハンドルを慌てて操作したが、間に合わずにB君と衝突した。


事故の原因

 Aさんが、右折する先の横断歩道上を十分に注意していなかったことが事故の原因である。Aさんは、対向車には注意をしていたが、横断する歩行者のことは頭になかったと、さらにこのときAさんは、考え事をしていたと言う。
 また、事故が発生した当時は雨が降っていたため、ドアガラスを通して歩行者が見えにくかった可能性もある。このような状況下では、普段より慎重に周囲の安全を確認する必要があったと言える。


この事故から学ぶこと

 青信号で交差点を右折する場合、自分の進行方向と同じ向きで、交差点を横断する歩行者は発見しにくい。対向車のほうを見ていると、歩行者は視野の右はじ、あるいは、右がわの視野の外に位置することになる。このような、場合は、首をしっかり右に回して目視しないと歩行者を見落とす危険性がある。
 また、交差点を横断する歩行者は、自分と同じ方向の青信号に従って右左折する車両には注意すべきである。走って横断しようとすると、運転者からはさらに発見しにくくなるので危険である。運転者が自分のことを見ているかを確認してから前へ進むくらいの慎重さが必要である。

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雨天の高速道路で発生した多重事故

事故の概要
 平日の昼間、Aさんは乗用車で高速道路を走行していた。強い雨が降っていたが、Aさんは追い越し車線を時速90q以上の速度で走行していた。Aさんの前を走っていたBさんの乗用車が、前方になにかを発見して減速したが、Aさんは前車の減速に気づくのが遅れた。前車に接近し過ぎたのに気づいて、Aさんは急ブレーキとハンドル操作で衝突を回避しようとしたが、停止できずに乗用車に追突した。Aさんの乗用車が停止したところ、Aさんの後方を走行していた車両も次々に追突した。この事故は、7台の車両が衝突する多重事故となった。


事故の原因

 Aさんが、前方の様子を十分に注意していなかったことが事故の原因である。事故当時は強い雨が降っており、見通しが悪く、路面も滑りやすくなっていた。また、事故が発生した場所は、緩やかな下り勾配となっていた。このような状況では、安全に減速、あるいは停止できるまでの距離が長くなることから、速度を落とすなどして走行すべきであるが、Aさんには危険な状況であるとの認識がなかった。もっとも、認識不足であったのは、後続車両の運転者も同じであった。このため、停止できずに多重事故となったと考えられる。


この事故から学ぶこと

 天候不良などの悪条件下においても、通常の場合と変わらない速度と車間距離で走行するなど、無警戒で運転している人も多いようである。とくに、雨の日の下り勾配の道路では、停止距離が長くなるだけでなく、急なハンドル操作をするとスリップしやすい。このような場所では、速度を落として、前方の様子を十分に警戒しながら走行すべきである。道路を通行する人は、天候等の環境に合わせて安全な行動をすべきである。

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